目、耳、鼻などの感覚神経は年齢と共に衰え、徐々に悪化していきます。その中でも耳の聞こえは認知機能とも関係が深く、コミュニケーションの質や生活の質(QOL)に直結する重要な問題です。
「聞き返しが増えた」「耳の奥でジーという音が鳴り止まない」……そんな初期サインを見逃さず、早めに対策を打つことが大切です。今回は、耳の健康を数値で捉え、漢方の視点から改善する方法をお伝えします。
① 耳の聞こえの「数値」の味方
聴力検査の結果で見かける「dB(デシベル)」や「Hz(ヘルツ)」という単位。これらを理解すると、自分の耳のどの部分が弱っているかが見えてきます。
| 項目 | 意味 | チェックのポイント |
| dB(デシベル) | 音の大きさ(強さ)。 | 数値が大きいほど、大きな音でないと聞こえない(=難聴)状態です。 |
| Hz(ヘルツ) | 音の高さ(周波数)。 | 加齢による難聴は、まず高い音(4000Hz以上)から聞こえにくくなります。 |
| 語音明瞭度 | 言葉を聞き分ける力。 | 音は聞こえても「何を言っているか判別できない」場合にチェックします。 |
② 難聴・耳鳴りといわれる数値あるいは指標
一般的に、聴力レベルが 25dB(デシベル)以上 になると、軽度の難聴とみなされ始めます。
聴力のステージ分類
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正常: 0〜25dB。小さなささやき声も聞き取れます。
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軽度難聴: 26〜40dB。騒がしい場所での会話や、離れた場所からの声が聞き取りにくい。
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中等度難聴: 41〜70dB。普通の会話が聞き取りづらく、補聴器の検討が必要になる段階です。
認知機能との関係: 難聴を放置すると、脳への刺激が減り、コミュニケーションを避けるようになることで、認知症のリスクが数倍高まるという研究報告もあります。耳のケアは「脳のケア」でもあるのです。
③ 耳の機能が悪化する原因
耳鳴りや難聴の主な原因は、耳の奥にある「有毛細胞」の減少と、血流の悪化です。
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加齢による消耗(腎虚): 東洋医学では「耳は腎の華(はな)」と言われ、耳の機能は五臓の「腎」が司っています。加齢で腎のエネルギーが減ると、耳の衰えが進みます。
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微細血管の血流不全: 耳は非常に細かい血管と神経でできています。血行が悪いと、有毛細胞に栄養と酸素を充分に送ることができません。また音を脳に伝える機能も低下します。貧血気味の方は若いうちから注意しましょう。
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ストレスと自律神経: ストレスは耳の血管を収縮させ、突発的な耳鳴りや聴力低下を招きます。
- 有毛細胞が傷つく:大きな音(=おおきな振動)に長時間さらされたり、ウイルス感染、風邪などで内耳の炎症を起こしたとき。
④ 難聴初期・耳鳴りに役立つ漢方薬
「年齢のせいだから治らない」と諦める前に、漢方の力を借りて「腎」を補い、血流を整えましょう。
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耳鳴丸(じめいがん)/耳響丸: 耳鳴りや聴力低下に特化した処方です。特に「腎」を補い、耳の奥の機能を活性化させます。
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八味地黄丸(はちみじおうがん): 加齢による「腎虚」の基本薬。耳の衰えだけでなく、下半身の冷えや夜間尿を伴う場合に適しています。
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強力な「動物性生薬」の併用: 頑固な耳鳴りや難聴には、前回の記事でも触れた**「海馬(タツノオトシゴ)」や「擬黒多刺蟻(アリ)」**を含む処方が非常に有効です。これらは「腎」に強力な活力を与え、神経の修復を助ける働きがあります。
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釣藤散(ちょうとうさん): 高血圧気味で、耳鳴りと共に頭痛やめまいがある方に適しています。
上記以外にも漢方薬はたくさんあり、お体質に合わせて選ぶことがとても大事です。当店へどうぞご相談ください。
⑤ 聴力を守るための生活習慣(エクササイズ)
耳周りの環境を整え、老化のスピードを遅らせましょう。
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耳周りのマッサージ: 耳の付け根や耳たぶを優しくもみほぐし、耳周りの血流を促進します。
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「耳を休める」時間を作る: テレビやイヤホン、騒音から離れ、1日30分は静寂の中で過ごす時間を持ちましょう。
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首こり・肩こりの解消: 耳への血流は首を通ります。首のストレッチを行い、血行を妨げないようにしましょう。
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抗酸化食品の摂取: 細胞の老化を防ぐため、黒豆、黒ゴマ、ブルーベリーなど、東洋医学で「腎」に良いとされる黒い食べ物を積極的に摂りましょう。
桃仁堂からのメッセージ
耳の聞こえが悪くなると、会話が億劫になり、世界が少しずつ狭まってしまうような寂しさを感じることがあります。しかし、漢方で内側から「腎」の力を補うことで、音がクリアになったり、不快な耳鳴りが気にならなくなったりする例はたくさんあります。
「まだ大丈夫」と思わず、初期のうちにご相談ください。あなたの聞こえの健康を、心を込めてサポートいたします。





