【症例】重度の子宮内膜症で手術およびホルモン治療をされている女性。漢方薬の血流改善薬を併用されることで日常の痛みが減少しております。
子宮内膜症に用いられる漢方薬は、西洋医学的な治療と並行して、症状の緩和や体質改善を目的として用いられることがあります。ただし、漢方薬の効果には個人差があり、科学的な根拠が十分とは言えない場合もあります。必ず医師や漢方専門の薬剤師に相談し、ご自身の体質や症状に合った漢方薬を選択することが重要です。以下に、子宮内膜症に用いられる主な漢方薬を5種類とその特徴を述べます。
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当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 特徴: 比較的体力がなく、冷え性で貧血傾向のある女性に用いられることが多いです。月経痛、月経不順、めまい、むくみ、肩こりなどの症状を伴う子宮内膜症に適応します。血行を促進し、水分代謝を改善する作用があるとされ、子宮内膜症による痛みを和らげ、子宮内の血液循環を改善する効果が期待されます。
- 注意点: 胃腸が弱い方には不向きな場合があります。
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桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 特徴: 比較的体力があり、瘀血(おけつ:血の滞り)の症状がみられる女性に用いられます。月経痛、月経不順、肩こり、頭痛、のぼせ、しみなどの症状を伴う子宮内膜症に適応します。血行を促進し、炎症を抑える作用があるとされ、子宮内膜症による痛みを軽減し、病巣の進行を抑制する効果が期待されます。
- 注意点: 比較的温性の生薬が含まれているため、のぼせが強い方には注意が必要です。
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桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
- 特徴: 比較的体力があり、便秘傾向で、下腹部痛や精神不安を伴う場合に用いられることがあります。瘀血を強く改善する作用があるとされ、子宮内膜症による激しい痛みを和らげる効果が期待されます。
- 注意点: 瀉下作用があるため、胃腸が弱い方や体力の低下している方には慎重な投与が必要です。
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温経湯(うんけいとう)
- 特徴: 体力が中程度以下で、手足の冷え、唇の乾燥、皮膚のかさつき、月経不順などを伴う場合に用いられます。血行を促進し、体を温め、ホルモンバランスを整える作用があるとされ、子宮内膜症による様々な症状の緩和に用いられます。
- 注意点: 比較的穏やかな作用ですが、体質によっては合わない場合があります。
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芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
- 特徴: 急激に起こる筋肉のけいれんや痛みを和らげる効果があり、子宮内膜症による強い月経痛や下腹部痛に対して頓服として用いられることがあります。
- 注意点: 長期連用により、偽アルドステロン症などの副作用が現れることがあるため、医師や薬剤師の指示に従って使用する必要があります。
重要な注意点:
- 漢方薬は、子宮内膜症そのものを根本的に治療するものではなく、症状の緩和や体質改善を目的とした補助的な役割を果たすものです。
- 子宮内膜症の治療は、西洋医学的な治療が基本となります。漢方薬を使用する場合は、必ず婦人科の主治医に相談し、西洋医学的な治療との併用について指示を受けるようにしてください。
- 漢方薬の効果や適切な種類は、個人の体質や症状によって大きく異なります。自己判断で使用せず、漢方専門の医師や薬剤師に相談し、体質に合った漢方薬を処方してもらうことが最も重要です。
- 漢方薬の中には、他の薬剤との相互作用を起こす可能性のあるものもあります。服用中の薬がある場合は、必ず医師または薬剤師に伝えましょう。
上記の情報はあくまで一般的なものであり、個々の状態に合わせた漢方薬の選択や服用方法は、専門家である医師や漢方専門の薬剤師の判断が不可欠です。




