冬の養生法と腎の話
漢方通信 ~漢方で健康美人になろう~ 2014.12月号
皆様こんにちは!このごろ散歩をしていると、色づいた街路樹のイチョウやカエデの葉っぱがハラハラと散り「寒」の到来が身に沁みます。冬は草木が枯れ落ち動物も冬ごもりするように、陽気(エネルギー)を外に出さず蓄えておく時期です。
漢方の古典『素問』では冬の3ヶ月を「閉蔵」と言い、「夜は暗くなったらすぐ休み、朝は太陽が昇って暖かくなってから起き出すのが良い」とありますが、何かと忙しい現代人には、そうもいきません。しかし夜ふかしや過労が続いて無理をしたり、激しい運動をして大汗をかくと春になっても体のだるさが取れず体調を崩しますのでいつもより余裕を持った生活を心がけましょう。
冬にいちばん大切な臓器は「腎」と言われています。では腎の働きについて考えてみましょう。
不老長寿の秘訣は、腎をいたわることにあり!
ここで言う「腎」とは西洋医学で言う腎臓の排尿の働きだけではなく発育・生殖・老化を主ります。
腎が衰えると、生理不順、無精子症、ED、頻尿、夜尿、失禁、難聴、耳鳴り、めまい、白髪、脱毛、骨粗鬆症、歯が抜ける、記憶力の低下など、ホルモンや免疫低下に伴う様々な症状が出てきます。
このような不調を「腎虚」と呼び、特に冬場、腎にエネルギー(精)が足りなくなった時に現れます。
また、『黄帝内経』には2,000年以上も前に老化現象が次のように記されています。「50歳にして肝気が衰え、目が見えにくくなる。60歳で心気が衰え憂悲に苦しみ、血気が減少する。70歳で脾気が衰え皮膚が枯れる。80歳で肺気が衰え、魂が離れ言葉に障害が出る。90歳で腎気が焦げ他の四臓と経脈が空虚となる。100歳で五臓みな空虚となり神気も去り形骸のみが残る」また養生法を守れば人間の寿命は120歳であるとも書かれています。腎を労わる事は「不老長寿」の証であると言えるでしょう。
腎虚に効く冬の漢方薬
症状 | 漢方薬 |
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足腰の冷え・腰痛・下半身機能低下・夜間頻尿 | 八味地黄丸・牛車腎気丸 |
精子不足・ED・早漏・不妊症・更年期障害 | 海馬補腎丸 |
冷え症・動悸・下痢・尿漏れ・むくみ・体が重い | 真武湯・茯苓四逆湯 |
冬の養生法ポイント
- 心穏やかに早寝遅起き…睡眠を充分に取るようにしましょう。そして、なるべく感情の起伏も 少なくゆったりと過ごし、何事も無理をせず、エネルギーを消耗しないようにしましょう。
- 温性食品を食べること…根菜類(人参やゴボウ)は体を温めてくれます。お鍋料理やおでんに大根や白菜などの季節の野菜をたっぷり入れて食べると最適ですね。お肉では特に羊肉(ラム)が体を温める作用が強いのでジンギスカンもいいですね!また色の黒い食品は腎を滋養しますので海藻類、黒ゴマ、黒豆、玄米、椎茸や旬の牡蠣なども加熱して召し上がってください。
- 首、背中、足を冷やさない!…首の後ろに風邪のツボがあります。背中は体の「陽」(最も大切な部分)で邪気が最も侵入しやすいところです。寝るときは温かくして「陽」へのダメージを避けましょう。心臓から遠く離れている足先は一番冷えやすいところです。お風呂が苦手な方は少し熱め(40℃位)のお湯で足湯をどうぞ。血流が良くなり、ぐっすりと眠れるようになります。