自前の免疫機能をアップさせる小腸のα‐ディフェンシンに注目
腸内細菌叢の研究は多種多様の菌全体の働きを調整することが複雑で実はわかっていないことが多い分野です。
体外から、良い菌を摂る(乳酸菌など)方法は確かに効果がありますが、もっと大事なことがあるようです。
今月号はその仕組みについて注目されている研究についてお伝えします。
それは腸内細菌叢のバランスを守る成分として、自分の小腸から分泌されるαディフェンシンという成分の存在です。
αディフェンシンは「抗菌ペプチド」といい抗菌作用をもつため、食物とともに体内に侵入してくる病原菌に作用します。
体内に侵入した病原菌の殺し屋として働く「自然免疫」の重要な担い手のようです。
このαディフェンシンの分泌が減少すると、腸管に侵入してくる病原菌が増え、腸内細菌叢が乱れ、お腹がゴロゴロしたり、様々な免疫と関係する疾患に繋がると指摘されています。
同じ食品を食べているのに食中毒になる人とならない人、発病を分けるのはこの働きのようですね。
さて、それではαディフェンシンはどんな条件で分泌が盛んになり、または減少するのでしょうか?
京都大学の研究チームが、麹菌を使った発酵食品に含まれるペプチド(タンパク質が小さくなったもの)がαディフェンシンの分泌を刺激することを発表しています。
味噌やぬか漬、甘酒などなど日本の伝統食はすごいですね! また、北海道大学の研究によると、ストレスや老化、睡眠不足でαディフェンシン分泌量が低下することも解明されております。
改めて良い睡眠をしっかり摂ること、ストレスを溜めないことが大切のようですよ。
最後に補足です。
αディフェンシン以外にも、ヒトには病原菌から消化管を守る機能が備わっていますが、それは唾液と胃液です。
口の中は唾液により菌の増殖が抑えられていますが、口呼吸やシェーグレン、加齢で口内が乾燥しやすいとその免疫が落ちるため、気を付けてください。またpH2もある胃酸によっても殺菌されます。
高齢者や逆流性食道炎の方はタケキャブ™などのPPIなど胃酸を止める薬剤の常用や、よく噛まないで飲み込むような食べ方などでは胃酸が十分に作用せず、病原菌が腸管まで侵入しやすくなります。
多様な腸内細菌の構成は、食習慣や生活習慣、民族性や年齢などにより一人ひとり異なります。 腸内細菌叢が健全に働くと、病原体を排除したり、健康を保つ「短鎖脂肪酸」を産生したりします。
一方、破綻する(有害な腸内細菌が増える)と、肥満や脂肪肝、炎症性腸疾患、発達障害、うつ病、がんなどの発症につながることが明らかになっています。 あらためて自分の腸に注目してみましょう!