生薬講座㉜葛根、葛(カッコン、クズ)
クズは山や河原、街中の公園や空き地などでよく見かけます。「つる性」の植物で秋の七草の一つとしても有名です。赤紫色の藤を逆さにしたような花が咲いているのを見かけた方も多いと思います。
繁殖力が強く、ひと夏で10mぐらい伸びてまわりの木々を覆ってしまうぐらいの生命力があります。明治時代には日本からアメリカに輸出されるようになり、河川の土壌流出を防ぐ目的の植物としても普及したそうで、河原で見かけるのはその名残のようです。しかし、その繁殖力を制御できなくなり「グリーンモンスター」と呼ばれてしまっている現状もあるようです。
和菓子で使われる葛粉は根からとれるデンプンです。葛ぎりなど夏には涼やかな和菓子が嬉しいですね。
漢方薬の葛根湯は葛の根を乾燥させたものに麻黄・生姜・桂枝など、数種類の生薬を混ぜたものです。
漢方の傷寒論という本には「項背強ばること几几(シュシュ)、汗無く、悪風する者」に葛根湯が良いと書かれています。つまり、肩から背中にかけて強張る症状がある患者に用いることができるので、肩凝りに使っても良いのです。※几几(シュシュ)とは肩をすくめた動作を表現しているようで、そのように肩がこわばっていることを表わす、と教わりました。汗が無ければ葛根湯を選び、汗をかいている患者には桂枝加葛根湯が良いようです。
葛根【マメ科Leguminosae:クズPueraria lobata Ohwiの周皮を除いた根】(日本産)
※日本産が繊維質であるのに対し、中国産はシナノクズP.lobata Ohwi var. chinensisに由来し、粉質である。
[性味]甘・辛・涼
[帰経]脾・胃