生薬講座㉟やつで(八角金盤)
葉が大きく手のひらのように裂けた独特の形をしているので見つけやすい植物です。丸くまとまって咲く白い花は、晩秋に咲きます。林内の日当たりの悪いところによく自生しますが、庭木としてもよく植えられます。
ヤツデの葉を乾燥したものは、 八角金盤(はっかくきんばん)と呼ばれ、サポニンを含み、去痰など薬効のある生薬にもなります。主に民間薬として使われていました。
また、乾燥葉をお風呂に入れて薬草風呂にすると、リウマチや痔に効くと言われています。
ヤツデは別名、「天狗の団扇」とも言われます。確かによく見ると天狗が持っている羽根の団扇に似ていますね。古人は魔除けの意味で庭に植えていたともいわれています。
天狗が持つ羽団扇は疫病を追い払い、魔除けになるという迷信から、形が似ているヤツデは庭に植えられる事が増えたそうです。関東大震災の後、航空写真に焼けた家々の中に緑の葉を付けた樹木が映りました。
高熱に囲まれながらも焼失せず、火に耐えた木の姿が確認され、葉が大きく肉厚のヤツデも耐火力が強い植物であることが報告されています。
家が連なって並んでいた江戸時代から近隣の家が火事になった時に「貰い火」で広がるのを防ぐために、我が家を守る手段としてヤツデのような常緑樹を植えたようです。




