身近な薬草シリーズ 竜眼肉(りゅうがんにく)― 秋に実る、心を養う甘い果実
秋に実る果実といえば、柿や栗、ぶどうなどを思い浮かべますね。
中国南部などで栽培される「竜眼(りゅうがん)」も、そのひとつです。
竜眼はムクロジ科の果樹で、ライチの仲間です。果実は丸く、薄い黄褐色の皮に包まれています。皮をむくと、半透明の白い果肉が現れ、その中心には黒く丸い種子があります。
この黒い種子を龍の目に見立てたことから、「竜眼」という名前がついたといわれています。
秋に熟した実を収穫し、果皮と種子を取り除いて、白い果肉の部分を乾燥させたものが、生薬の「竜眼肉」です。
乾燥した竜眼肉は、赤褐色から黒褐色で、しっとりとした質感。甘く、独特の芳醇な風味があります。中国では古くから果物や食材としても親しまれてきました。
心と脾を補い、血を養う
中医学では、竜眼肉は「心」と「脾」を補い、血を養い、心を安らかにする生薬とされています。
ここでいう「心」は、単に心臓という臓器だけを指すのではありません。精神活動や意識、思考、睡眠などにも深く関わる働きと考えます。
また、「脾」は消化吸収を担い、食べ物から身体に必要な気や血をつくり出す働きに関わっています。
つまり、心と脾は、心身の健康を支えるうえで密接につながっているのです。
例えば、心配事が続いたり、考えすぎたりすると、食欲が落ちたり、お腹の調子が悪くなったりすることはありませんか?
中医学では、思い悩むことは脾の働きを損ないやすいと考えます。
脾の働きが弱くなると、気血を十分につくれなくなり、心を養う血も不足しやすくなります。
すると、気持ちが落ち着かない、眠りが浅い、夢をよく見る、動悸がする、物忘れが気になるといった状態につながることがあります。
このように、心と脾の両方が弱り、血が不足した状態を「心脾両虚(しんぴりょうきょ)」といいます。
竜眼肉は、このような状態に用いられる生薬です。
代表的な漢方処方には「帰脾湯(きひとう)」や「加味帰脾湯(かみきひとう)」があります。
甘い竜眼肉を食養生に取り入れてみましょう
竜眼肉のよいところは、生薬でありながら、食材としても楽しめることです。
乾燥した竜眼肉は、そのまま食べるほか、お粥やスープ、薬膳茶などにも使えます。
お粥に加えると、じんわりとした自然な甘みが広がります。なつめやクコの実など、ほかの薬膳食材と組み合わせるのもよいですね。
中医学では、食べ物から気血を養い、日々の身体を整えていくことを大切にします。
秋が深まり、朝晩の冷え込みが強くなる頃。忙しさや気温の変化で、心も身体も疲れを感じることがあるかもしれません。
そんなときは、少し立ち止まって、自分の身体をいたわる時間をつくってみませんか。
甘く優しい味わいの竜眼肉。
心と身体を養う秋の食養生のひとつとして、知っておいていただきたい生薬です。



